クールな次期社長の甘い密約
常務は、今の状況だと専務が一番の有力候補だと言った。でも、専務はまだ若く経験も少ない。社長になるのは時期尚早だとため息を付く。
『僕と社長は、そろそろ我が社も世襲ではなく、本当に実力のある者を経営者にしたいと思っているんですよ。会議では、その事を強く訴えるつもりです』
常務は力強くそう言ったが、専務以外に社長を任せられる人物が居るのだろうか?
常務との電話を切り、麗美さん達とも話しをしたが、やはり最後は専務で落ち着くんじゃないかという意見だった。
「こんな簡単に専務の社長就任が決まるんだったら、無理に私と結婚しなくてもいいのに……」
しかし、大森先輩は「それは違う」と首を振る。
「大沢さんとの結婚が決まったから専務の株が一気に上がったのよ。なんと言っても津島物産は会長が一代で築き上げたワンマン会社だからね。会長の意見は絶対。大株主も逆らえないわ。
でも、こんな風に大沢さんを監禁するような専務とホントに結婚するつもりなの?」
「結婚式は今週末です。もうどうしようもありません」
「そうだね……大沢さんが病院で会長を怒らせてしまったって言ってたけど、その事はさほど影響はなかったみたいだしね」
「……ですね」
二人は帰るまで私を心配してくれていたけど、もう私に選択の余地はない。一人になるとまたぼんやり時計を眺め、これが私の運命なんだとソファーに深く体を沈める。
でも、倉田さんの事だけは心残りだった。せめて倉田さんを会社に戻してあげたかった。