クールな次期社長の甘い密約
ビルの玄関には多くの社員が待ち構えていて、拍手と豪華な花束で私と専務を迎えてくれた。
お祝いの言葉が飛び交うエントランスの先には、今日の為に用意したのか、大型モニターが据え付けられ会長と社長の姿が映っていた。
専務が隣に居る社員にもう発表はあったかと確認しているが、会長の挨拶が長引いていてまだ発表はされていないとの事。
暫く固唾を呑んで画面に見入っていたけど、なかなか発表には至らない。すると、人をかき分け近付いてきた麗美さんが、私の服の袖を引っ張り小声で耳打ちしてくる。
「落ち着いて聞いて。今、会見場に行ってる常務から電話があったの」
「常務から?」
「シッ! 声が大きい」
慌てて手で口を覆い専務の方を見たのだけど、彼の目はモニターに釘付けで私の声は全く聞こえていない様だった。
「で、常務はなんて?」
「倉田課長と連絡が取れたみたいよ。居場所も分かったみたい」
「それホントですか?」
「うん、常務は茉耶ちんの今の状況を全て倉田さんに話したって言ってた。それでね、悪いとは思ったんだけど、例の結納金の倍返し云々の話し、常務に喋っちゃった」
「えっ、言っちゃったんですか?」
「だって~それが原因で茉耶ちんは専務と別れられなかったんだもの。この際だと思って全部言っちゃった。きっと倉田課長の耳にも入ってると思うよ」
「そうですか……」
倉田さんと連絡が取れたのは良かったけど、もう遅い……私はもうすぐ専務の妻になるのだから。