クールな次期社長の甘い密約
聞こえるのは愛しい人の息づかいと角度を変える度に響く甘いリップ音だけ。
あぁ……倉田さん、好き。大好き……
でも、唇が離れると我に返り、公衆の面前でなんて事をしてしまったんだろうと恥ずかしくて顔を上げる事が出来ない。そんな私の手を取り倉田さんが歩き出した時だった。
専務が「ふざけるな!」と叫び、倉田さんの肩を掴んで殴り掛かってきた。が、倉田さんはそれをかわし「大事な発表があるんだろ?」って目の前の大型ビジョンを指差す。
そこには、会長の顔がどアップで映っていて、丁度、新社長の発表をするところだった。
あれから随分経つのに、まだ発表してなかったんだ。
思わず私も大型ビジョンを見上げたのだけど、いよいよ発表という時に倉田さんに軽トラの助手席に押し込められ、その名前を聞く事が出来なかった。
気になって振り返った私の目に飛び込んできたのは、地面にペタリと座り込み天を仰ぐ専務の姿。
社長になれたのが嬉しくて腰が抜けちゃったのかな?
再び信号が変わり動き出した軽トラは、さっきまで乗っていた高級車とはえらい違いで、クッションが悪く少しの段差でも体が浮き上がる。
ピョンピョン跳ねる私の頭を撫で、倉田さんが笑ってる。隣に倉田さんが居るなんて夢みたい。けれど、これはいったいどういう事なんだろう?
事情を説明して欲しいと倉田さんに詰め寄るとボサボサの頭をポリポリ掻きながら話し出した。