クールな次期社長の甘い密約

「両家の顔合わせをした日、私はアナタとの密会画像が原因で会社をクビになりました。あの時、私達三人の話しを聞いていた人物が居たんです。いや、正確には、私が貴志にクビを宣告された瞬間、たまたま居たと言った方がいいかもしれませんね」


それは、ハンカチを忘れた事に気付き戻って来たおばあちゃんだった。おばあちゃんは仕事を失った倉田さんに同情し、三食付きで雇ってやるからウチに来ないかと言ったそうだ。


初めは断っていた倉田さんだったが、おばあちゃんが熱心に誘ってくれて両親も是非にと言ってくれたので、一緒に私の実家に行って農作業を手伝っていたらしい。


「あぁっ! だからそんな格好でお父さんの軽トラに乗ってたのですか……でも私、そんな話し全然聞いてないんですけど」

「私がそうして欲しいと頼んだのです。大沢さんには私の事は秘密にして下さい……とね」

「どうしてですか?」

「貴志と結婚するアナタを動揺させたくなかった。ですからスマホの充電が切れてからはそのままにして誰とも連絡を取らなかったのです」


しかし、今日は私の結婚式。両親とおばあちゃんは昨夜、東京に向かい倉田さん一人だったので、朝の作業が終わった後、久しぶりにスマホを充電してみたら、凄い数のメールや着信があって驚いたそうだ。


取りあえず常務に連絡すると大変な事になってると言われた。


「大変な事?」

「ええ、かなり大変な事です」


そう言うと倉田さんは私の右手を強く握り「有難う御座います」って言ったんだ。

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