クールな次期社長の甘い密約
「えっ? 何がですか?」
「大沢さんは会長に、私を孫として認めてやってくれと言ったそうですね」
「あっ、でもそれは……会長を怒らせてしまっただけで、倉田さんの力にはなれなくて……」
「いえ、アナタがそう言ってくれたお陰で、私は会長と話す事が出来たんです」
「ホントですか?」
「はい、あの会長が、今まですまなかったと謝ってくれました」
なんでも会長は私と話した後、私のひいおじいさんとひいおばあさんの夢を見たそうだ。
「会長は、夢枕に立った二人に相当、怒られたみたいですよ」
会長の夢に出てきたひいおじいさんは、自分の会社が大切なら、自分が一番認めている人物に会社を任せるべきだと言った。
実は、会長は倉田さんが子供の頃から彼には経営者としての素質があると思っていた。だが、本妻の息子である専務に後を継がせるのが筋だと思い、今まで決してその思いを口にはしなかったそうだ。
しかし、専務は我がままで自分勝手なところがある。大勢の部下を引っ張っていけるか心配になった会長は、倉田さんを傍に置き、専務を支えてもらおうと考えた。
「それで倉田さんを津島物産に入社させたんですね」
「そうです。でも会長は、強引に私を入社させた事は正しかったのかと随分悩んだそうです。
そんな時、私が津島家に食事に行き、会長に会ったのですが、久しぶりに見た私は疲れた表情をしていて、これ以上、私を会社に引き止めておくのは良くないと思った」
「じゃあ、倉田さんに酷い事を言ったのは、倉田さんを津島家から解放してあげる為?」
「会長なりの優しさだったというワケです」