クールな次期社長の甘い密約
「あぁっ! そうだ! あんな大金どうやって用意したんですか?」
「あのお金は、私が以前、株を売却してそのままになっていた二千三百万と、残りは診療所の先生に借りました」
「診療所の先生に?」
今朝、日曜で診療所が休みだった先生は、暇だったので倉田さんと囲碁でも打とうとたまたまウチに遊びに来ていた。そこで倉田さんの電話の内容から事情を知った先生が残りの三千万を出してくれると言ったそうだ。
「先生は、好き同士なら絶対に諦めてはいけない。自分の様に後悔する事になると言っていました」
「先生がそんな事を……」
「それと、大沢さんのお母様にむしり取られる前で良かったとも言ってましたよ」
「え゛っ……」
あの先生、母親の企みに気付いていたんだ。
そして倉田さんは、そのお金を持って東京に向かった。本当は電車で来るつもりで駅に行ったが、次の電車が来るまで一時間以上あったので、そのまま軽トラで高速をぶっ飛ばして来たらしい。
「アナタと貴志が婚姻届を提出する前に会社に寄る事になっていると常務から聞いていましたから会社に向かったのですが、途中、寄り道をしていたら遅くなってしまいまして……
私が会社に到着した時には既に大沢さんは出た後で、慌てて後を追ったというワケです」
寄り道していたというのが引っ掛かり、問い詰めると誰かと会っていたという事が判明した。
「倉田さんが来るのがもう少し遅かったら婚姻届を提出していたんですよ。私の事が何より大切とか言ってたのに……話が違いますね。いったい誰と会っていたのですか?」
ちょっとばかり嫌味を言ってみると倉田さんはバツが悪そうに眉を下げる。