クールな次期社長の甘い密約
「私が会いに行っていたのは、君華さんですよ」
「君華さんって、専務の亡くなったお母様ですか?」
「ええ、私は君華さんが亡くなる時、貴志を頼むと言われ、貴志を社長にする事が私に与えられた使命だと思ってきました。しかし……私が社長になれば、君華さんとの約束を破る事なる」
どうするのが一番いいのか……倉田さんは迷い、その答えを出す為に君華さんに会いに行ったそうだ。墓前で手を合わせ君華さんに問い掛けてみると――……
「空耳かもしれませんが、"これからは、人の為ではなく、自分の為に生きなさい"そんな声が聞こえた様な気がしたんです」
倉田さんは君華さんが背中を押してくれたんだと思い、やっと決心がついた。常務に社長になると伝え、私を追い掛けた。
あぁ~なるほど! 倉田さんの返事がまだだったから、会長の発表が延び延びになっていたのか!
「私達は天国に居る大切な人達のお陰で、今こうやって一緒に居る事が出来る。感謝しないといけませんね」
「そうですね……」
天国からのとっても素敵なサプライズに感謝しつつ、ソッと手を合わせると軽トラが速度を落とし、見覚えのある駐車場に入って行く。そこは、私と専務が結婚式を挙げる予定だったホテル。
「あぁ、そうだ。専務との結婚がなくなったから式はキャンセルしないと……来て下さる予定の方々にもお詫びしないといけませんね」
多くの人達に迷惑を掛ける事になってしまい落ち込んでいると倉田さんが助手席のドアを開け、爽やかな笑顔でサラッと言う。
「でしたら、予定通り結婚式を挙げてしまいましょう」