クールな次期社長の甘い密約

「へっ?」

「そうすれば、誰にも迷惑を掛けずに済むでしょ?」

倉田さんのあまりにも大胆な提案に呆然として言葉も出ない。


「新郎が変わっただけです。大した問題じゃない。早くしないともう時間がありませんよ」

「いや、それは大問題だと思いますが……」


どうしよう……こんなのアリなのかな? 私達はついさっき付き合う事になったばかりなのに、いきなり結婚式しちゃっていいの?


戸惑いながら結婚式場がある最上階に行くと私の結婚式の担当をしてくれているウエディングプランナーの山本さんがエレベーターの前で待ち構えていた。


「あぁ~大沢様、約束の時間が過ぎてもお見えにならないので何かあったのかと心配しておりました」

「すみません。ちょっと色々ありまして……」

「いえいえ、津島様の携帯に掛けてもお出になりませんし、どうなる事かと思いましたがホッとしました。では、時間がありませんので急いでお着替えの方を……」


そこまで言って山本さんが倉田さんに気付き、不思議そうな顔をする。


「あの、そちらの長靴の方は? 新郎の津島様ではありませんよね?」

「えっと、その……実は、新郎をこの人に変更して頂きたいのですが……」

「新郎を……変更?」


山本さんはそう言ったっきり暫く放心していたが、すぐに辺りを気にしながら「事情は分かりました」って眼光鋭く私を見る。


「えっ? 分かるのですか?」


まだ何も話してないのに、こんな複雑な事情を瞬時に理解するとは、さすがベテランのウエディングプランナーだ。

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