クールな次期社長の甘い密約

「大沢様の名誉の為に全力を尽くしますからご安心下さい」

「名誉?」

「では一応、何かあった時の為に、そちらの方のお名前をお聞かせ下さい」

「あ、はい。倉田さんです」

「倉田様ですか……で、下のお名前は?」


そう聞かれてハッとした。なぜなら、私は倉田さんの下の名前を知らなかったから。


「えっと……倉田さん、下の名前はなんですか?」

「おや、私の名前を知らないのですか?」


呆れ顔の倉田さんが山本さんに名刺を渡すと山本さんは何かを決意した様に私の手を取り力強く握り締める。


「大沢様、心配はいりません。そちらの方は津島様にどことなく似てらっしゃいますし、メイクで誤魔化せばなんとかなるでしょう。

こんな事態になってショックでしょうが、スタッフ一同、心を込めてお世話させて頂きます。大沢様、ファイトです! 替え玉の倉田様も頑張って下さい」


替え玉? なんか分かんないけど、励まされてしまった。


「山本さん、やけに力入ってましたね」


去って行く山本さんの後ろ姿を見つめ首を傾げるとなぜか倉田さんがクスクス笑ってる。


「分からないのですか? アナタは結婚式直前に新郎に逃げられた可哀想な新婦だと思われているんですよ。そして私は、貴志の代わりに急遽呼ばれた替え玉の偽新郎というとこでしょうか?」

「ゲッ! マジですか?」


訂正してくると言う私を倉田さんが引き止め「まぁ、いいじゃありませんか。それも面白い」なんて言ってる。

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