クールな次期社長の甘い密約

「うん、第一印象が悪ければ悪いほど、その効果があるんだよ~」


麗美さんは大学で心理学も学んでいたそうで、人は、自分が置かれた状況や環境によってどんな心理状態になるかを熱心に説明したくれたんだけど、小難しい専門用語連発でイマイチよく分からない。


「えっと、もっと簡単にお願いできませんか?」

「もぉ~だからさ、茉耶ちんに対する専務の第一印象は最悪だったワケよ。イメチェンして人並みになれば御の字。なんの期待もしていなかったはず。

でも、予想に反してめっちゃ綺麗になっちゃったから、衝撃を受けて心を揺さぶられたんじゃない? それに、専務が普段接している女性は、みんな非の打ちどころがない完璧な人ばかり。

茉耶ちんみたいな、ちょっと抜けてて何をやらかすか分からない女は新鮮だったんだよ」


要するに、ドジな私が珍しかったからちょっと興味を持っただけって事か……


「だよね……専務は私をからかってたんだ」


納得して苦笑いすると、麗美さんが「それは、分かんないよ~」って意味深な笑みを浮かべる。


「専務の本気度を確かめる為にも、出しなさい」


徐に要求されたのは、お昼に専務が私の胸に押し込んできたあの名刺。鞄の中からソレを取り出し差し出すと、麗美さんの片方の眉がピクリと動いた。


「ヤダ……茉耶ちん、専務、マジかもしれない……」

「はぁ?」

「この名刺、社名も役職も書いてない。携帯番号だし、住所はきっと自宅だよ。なんとも想ってない女に、簡単に自分のプライベートを晒すような事普通しないでしょ?」

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