クールな次期社長の甘い密約

「で、電話? 無理です! こんな精神状態で専務に電話なんて出来ません」

「でも、こんな名刺まで貰って電話しないの失礼じゃない?」

「失礼……ですか?」

「そりゃそーでしょ? きっと待ってると思うよ~専務に恥かかせてもいいの?」


そう言われたら迷ってしまう。私的にはパンツ事件で精神的ダメージが大きく、今日はもうソッとしておいて欲しいとこだけど、専務に恥をかかせるのは申し訳ないし、どうしたらいいのかな……


心の中で葛藤が続いた。すると麗美さんが私のグラスに並々とビールを注ぎ、怪しい目をしてニヤリと笑う。


「シラフで話せないなら、飲んじゃいなよ」


今までお酒なんてお神酒で舐めたくらいで、飲みたいと思った事などない。しかし、こうなったらアルコールの力を借りる他ないか……


グラスのビールを一気に飲み干すと苦味とキツい炭酸が喉を刺激して思わず顔を歪める。でも、二杯、三杯と飲み進めていく内に平気になり、徐々に気分が良くなってきた。


「茉耶ちん、飲める口だね。ほらほら、もっと飲んで~」


麗美さんに勧められるまま何杯もビールを飲み、すっかり出来上がってしまった私は専務に電話するくらい別にどうって事ないなんて思い始める。


腕時計をチラッと見た麗美さんに、そろそろ時間だと告げられた時には、もう完全に酔っ払っていてスマホを手に勢いよく立ち上がる。


「了解れすっ! 大沢茉耶は今から専務に電話しやす」


店内の人達の好奇な視線も気にせず、名刺の番号に電話すると数回の呼び出し音の後、専務の低音ボイスが聞こえてきた。


「あ、専務れすか? お待ちかねの茉耶ちんれすよ~」

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