クールな次期社長の甘い密約
『……茉耶……ちん?』
専務はそう言ったきり、暫く無言だった。
「あれ~? もしもーし、専務ぅ~どうしちゃったのかなぁ~? せっかく電話したのに、なんも喋らないってどういう事っすか?」
タメ口で言いたい放題の私を見て、麗美さんがアタフタと慌て出す。でも私はそんな彼女の姿が妙にツボってしまいバカ笑い。すると、やっと専務の声がした。
『随分ご機嫌だな。酔ってるのか?』
「はいっ! 茉耶ちんは人生初のビールで酔っております!」
『ほーっ、それはいい。打ち合わせが延びて今、車に乗ったところなんだ。これから俺と飲まないか? 迎えに行くよ』
「了解しました! 詳細は、秘書のへミさんにお願いしやす」
呆れ顔の麗美さんにスマホを差し出すと「私はヘミじゃねーし、茉耶ちんの秘書でもねーよ!」って怒鳴りながらスマホを奪い取る。
専務に電話するという大仕事を終え、気が抜けた私は椅子に座りウトウトと微睡む。そして、気が付いた時には、麗美さんに抱えられお好み焼き屋が入っているビルを出ていた。
「ちょっと~茉耶ちん、しっかりしなさいよ。一応、ここの場所は専務に伝えといたけど、ホントに専務と飲みに行くの?」
「はぁ? なんの事れすか~?」
「あ~ぁ、ダメだこりゃ……」
麗美さんが大きなため息を付いた時、私達の前にハザードを点滅させた黒塗りの車が停車し、後部座席の窓が静かに下がる。
「茉耶ちん、お待たせ」
「あれ~専務じゃないれすかーどうしたんれすか?」
「君に会いたくてね。さあ、乗って」