クールな次期社長の甘い密約
きっと、イジメられた経験のない人がこんな話しを聞いたら可哀想にって同情し、憐れみの表情で私を見ただろう。でも、同じ苦しみを味わってきた麗美さんだから……麗美さんだからこそ、私の気持ちを全てを理解した上で笑ってくれたんだよね。
釣られて微笑む私に麗美さんは続ける。
「私は過去の辛かった出来事が今の原動力になってるから当時の悔しさを忘れないように、昔の自分をスマホの待ち受けにしてるけど、茉耶ちんはもうその過去忘れた方がいい。
これからは目立っても誰も茉耶ちんをイジメない。いっぱいお洒落していいんだよ」
「麗美さん……」
「だからさぁ~専務の事好きなら諦めないで!」
そう言った麗美さんが突然「私も諦めないから」と宣言するから、なんの事かと訊ねれば、実は社内に好きな人が居ると本日、二度目のカミングアウト。
「えっ? 麗美さん会社に好きな人居るんですか?」
「うん、まだ誰にも言ってないんだけどね。茉耶ちんにだけ教えてあげる」
私の知っている人だと言うから余計気になりドキドキして身を乗り出したんだけど、その相手の名前を聞いた瞬間、驚きで絶句してしまった。
だって、麗美さんの口から出た名前は……
「――秘書課の倉田課長だよ」
うそ……あの無表情で何を考えているのかサッパリ分からない倉田さん?
「えっと、倉田さんのどんなところが良くて……その、好きになったのですか?」
私の問に麗美さんは恥ずかしそうに頬を赤く染め、まるで少女の様にはにかむ。
「う~ん……クールでミステリアスなところかな」