クールな次期社長の甘い密約

スマホのディスプレイに表示されていた名前は、"津島専務"。思わず息を呑み背筋がピンと伸びる。


「ど、どうしよう……専務から電話掛かってきた……」


うろたえる私に、麗美さんは落ち着き払った声で「会う約束するんだよ」と耳打ちしてくる。小さく頷き電話に出ると専務の低く通る声が聞こえてきて心臓が騒ぎ出す。


『茉耶ちん? 電話してくれてたね? 今まで会議だったんだよ。で、今どこ?』

「えっと……今、会社近くの居酒屋です」

『そうか、どうやら今日はまだ酔っぱらっていないようだな』

「あ、あぁ……今日は大丈夫です」


クスリと笑う専務に恐縮しまくっていたら、なんと! 専務の方から今から会おうって言ってくれたんだ。私は麗美さんと視線を合わせ迷う事なく「はい」と答える。


麗美さんに言われたのもあるけど、やっぱり私、専務が好きだから……こんな気持ちになったの初めてだから……もう人目を気にしてコソコソ生きるのはやめよう。地味子は今日で卒業するんだ。


――と決意したものの、麗美さんと居酒屋の前で別れ一人になったとたん、急に不安になってきた。気持ちを落ち着かせようと何度も深呼吸をするが、悲しいかな全く効果がない。


そうこうしているとあの黒塗りの車が現れ、車から降りてきた倉田さんが専務が乗っている後部座席のドアを開ける。


「どうぞ……お乗りください」


相変わらずの無表情だけど、この表情の裏に隠れている彼の本心が気になって仕方ない。


倉田さんが好きなのは、専務なのかな?

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