クールな次期社長の甘い密約

「でも、こんな手の込んだ料理を手早く出してくれるなんて……普通の人には出来ませんよ」

「それは、専務からフレンチを食べたいというリクエストがあったので、昨日の内に下ごしらえしてあったのです。では、私は自室で頂きますので失礼します」


ヒヨコちゃんのエプロンを外した倉田さんがトレーに乗せた料理を持ってリビングを出て行く。


「自室……ですか?」


首を傾げ、専務に問い掛けるとワインのグラスをテーブルに置いた専務がコクリと頷いた。


「玄関を入ったすぐ右側の部屋、そこが倉田の部屋なんだよ」

「えっ? 倉田さんの部屋って……倉田さんはここに住んでるんですかぁ?」

「そうだよ。あれ? 倉田に聞いてなかった?」

「そんな……専務と倉田さんが、どどど同棲してたなんて……全然全く何も聞いてませんよ!」


ブッたまげて、ついタメ口になってしまった。


ヤバい……私は禁断の秘密を知ってしまったのかもしれない。倉田さんの片思いだと思っていたのに、専務と相思相愛だったとは……この部屋は二人の愛の巣だったんだ。


あぁっ! だから専務がゴルフで出掛けた後、音もなく忍者みたいに現れたのか。


「なるほど……」


例の疑問が一気解決したけど、今度は新たな疑問が湧き上がってきた。


でも、そうなると私は、なぜここに居るんだろう? ハッキリ言って、ただのおじゃまムシだよね?

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