クールな次期社長の甘い密約
乱れた髪のまま項垂れ、何もかも全て終わったと思った。
直前で拒むなんて、専務はもう私を嫌いになったよね。
シーツに零れ落ちる涙を拭う事も出来ず、嗚咽を繰り返す事しか出来ない。そんな私の髪を専務が手ぐしで綺麗に整えくれて長い指で涙を拭ってくれた。
「……茉耶、そんなに泣くな」
「で、でも、私……」
「気にしなくていい。誰でも初めての時は怖いものさ。初心(うぶ)な茉耶も可愛いよ」
「えっ……」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、驚きの表情で専務を見上げる。
「私を許してくれるのですか?」
「バカだな……さっき言ったろ? 俺は茉耶の虜だって。こんな事気にしなくていい。俺もちょっと急ぎ過ぎたよ。すまない」
「専務……」
嫌われても文句言えないのに、謝ってくれるなんて……なんて優しい人なんだろう。
今度は嬉しくて涙が溢れる。私を見下ろす専務の顔が涙で滲み霞んでいくが、彼が微笑んでいるのはハッキリ分かる。
それから専務は私が泣き止むまでずっと抱き締めてくれていた。彼の胸から規則的に聞こえてくる心臓の音がまるで子守歌の様に心地いい。だから、ついウトウトと微睡み自然に瞼が閉じていく――
薄れゆく意識の中、専務の胸に顔を埋め、こんなに幸せでいいのかな? なんて考えていた。
「専務……私、今が一番幸せです」
「俺もだ。茉耶が愛しくて堪らない」
愛しいだなんて……男の人にそんな事を言われる日が来るなんて思ってもなかった。あぁ……これが夢ならどうか覚めないで。