クールな次期社長の甘い密約
好きな人にキスで起こされる。あぁ……これが夢だったんだ。もう起きてたけど、細かい事はどうでもいい。朝一でキスされるって事が重要なんだ。
変な拘りだけど、夢が叶って幸せいっぱい。一人悶絶していると今度は専務が申し訳なさそうな顔をする。
「せっかく何も予定のない休日だから茉耶ちんとデートしようと思ったんだが、親父に呼ばれてね。今から実家に行かなきゃいけないんだ。悪いな」
「いえ、そんな……私の事は気にしないで下さい」
そう、専務は十分優しくしてくれた。これ以上の事を求めたらバチが当たる。
急いで服を着て倉田さんが作ってくれた朝食を食べ終えると三人でマンションの部屋を出た。専務が実家に行くついでに私も送ってくれると言うので、お言葉に甘えて車に同乗させてもらう事にしたんだ。
専務の実家は車で十五分ほど。先に専務の実家に向かい、専務を降ろした後に私のマンションに行ってくれるとの事。
「また親父のお小言だろうな……気が重いよ」
独り言の様に呟き、ため息を漏らす専務。実家に帰るのは、あまり気乗りしないみたいだ。
暫くすると右手に時代劇に出てくる様な白壁の塀が現れ、前方に大きな門が見えてきた。都会のど真ん中に、こんな武家屋敷みたいな家があるのかって感心していると車がその門の前で停車する。
「えっ? もしかして、専務の実家ってこの武家屋敷ですか?」
「武家屋敷? 茉耶ちんは相変わらず面白い事を言うな。そうだよ。ここが俺の実家。あんまり来たくないんだけどな」