クールな次期社長の甘い密約

「なんで倉田さんに、そこまで言われなきゃいけないの?」

「私は専務の秘書ですから仕事でもプライベートでも専務をお支えし、フォローするのが仕事です」

「これが仕事? 金魚のフンみたいに専務にくっ付いているだけじゃない!」


私達の言い合いは更にヒートアップし、お互い一歩も引かない。そんな状態だから私は怒りに任せ言ってはいけない事を口走ってしまったんだ。


「私の事を子供だってバカにするけど、本当は私に嫉妬してるんじゃないんですか?」


叫んだ後で我に返り、これはマズかったかも……と後悔する。でも倉田さんはその言葉の意味が分からなかった様だ。


「どうして私が大沢さんに嫉妬するのですか?」


本当は専務の事が好きなんでしょ? なんて、そんな事口が裂けても言えない。


倉田さんはシドロモドロになった私を鼻で笑い「何を考えているのかサッパリ分からない人ですね」って嫌味を言って車を急発進させた。


徐々に怒りが薄れ冷静になってくると、もしかしたら倉田さんは私が言った意味を分かっていてワザと気付かないフリをしていたんじゃないかと思い始める。


どうしよう。私、言い過ぎた。倉田さんを傷付けちゃったかもしれない。


謝ろうと思ったけど、なんて言っていいか分からず、マンションの前で車が止まるとお礼だけ言って逃げる様に車から降り走り出す。


マンションの部屋に帰っても倉田さんの事が気になって頭から離れず、それは夜になっても、翌日の日曜日も同じで、どんよりした気分でため息ばかり付いていた。

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