クールな次期社長の甘い密約
そうだ。私が初めて専務室に行った時、役員受付に居たブラックスーツの女性だ。って事は、あの人が倉田さんの代わりに出張に同行した秘書?
必要以上に専務に密着し、馴れ馴れしく話しをしている女性秘書が不快に思えてならない。だって、一週間以上も彼女は専務と行動を共にしてきたんだもの。専務を信じてないワケじゃないけど、もしかして……と勘ぐってしまう。
これって……嫉妬だよね? 私も人並に嫉妬という感情を持ち合わせていたんだ。
「おーい、茉耶ちん!」
専務が私に気付き手を振っている。仕方なくペコリと頭を下げ近付いて行くと倉田さんがご丁寧に専務の隣りに居る女性秘書を紹介してくれた。
「彼女は私の代わりに専務に同行した秘書課の主任。木村君だ」
「木村……さん?」
えっ? えぇっ? この人が森山先輩の宿敵、秘書課の木村さん? という事は、専務と付き合っていたって噂されてた人……
目の前に立つ木村さんは、初めて見た時と同じブラックスーツで、決して派手な格好をしているワケじゃない。なのに、行き交う男性達の視線を釘付けにしている。
スレンダーで背が高いから目立つというのもあるけど、それだけじゃない。目尻が上がった大きな瞳は凛とした大人の色気を感じさせるのに、ワインレッドの唇はぽっちゃりしていて実に愛らしい。
ちんちくりんで子供っぽい私とは大違い。女性として完全に負けている。
敗北感で居たたまれなくなり、奥歯をギッュと噛み締めると彼女は冷めた目で私を凝視した。