溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
三人が山口楼の中に消えると、そこで大きく息を吐き出した。
それからすぐにもう一組のお客が歩いて来るのが見えた。
あの人たちがそうなのかもしれない。
スーツを着た上品そうな年配の夫婦のうしろに、もうひとり女性らしき姿が見えたのだ。
薄紅色の着物を着て、しずしずとこちらに近づいてくる。
どんな女性なんだろう。
身を潜めつつ、じっと目を凝らす。
握った拳に力が入った。
両親らしきふたりが入口に入った直後、女性の姿をはっきりと捕らえることができた。
――嘘。
突然、全身の筋肉が強張る。
なにが起きているのかわからなかった。
足が震えるほどに心が乱れる。
胸を搔きむしられているようだった。
どうして亜樹が――?
私の目の前に現れたのは、あの亜樹だったのだ。
自分の目で見たことなのに信じられない。
なにかの間違いだと、必死に頭の中で訂正している私がいた。
亜樹は、たまたま両親とここに食事に来ただけのこと。
そう思い込もうとしてみても、それならばあの着物はなんなのだということになってしまう。
いかにも見合いのいで立ちが、どうしたって私の願望を打ち砕く。
亜樹が私を避けている理由は、ここにあったのだ。
すべてがしっくりきてしまった。
店に入る直前、亜樹が何気なくこちらを振り仰ぐ。
私を見つけて、その表情は一瞬で曇った。