赤いサヨナラは僕に似合わない


僕と君の関係ってなんだった?


今更こんなことを問うのは無駄だとちゃんとわかっているよ。ケータイの番号もラインのIDも変わっていた君にこの先また会うことなんてもうないんだろうから、僕の中だけで聞かせてくれよ。

僕は君に好きだと言ったね。

何度も、何度も、手を繋ぐたび、抱きしめるたび、唇を合わせるたび、体を重ねるたび。

君はそんな僕に目を細めて笑っていたよな。私も好きだよ、って照れて笑う君が可愛くて、僕は何度も何度も君に好きだと言っていたんだよ。


「本当は、小説家になりたいんだ」


初めて僕の夢を打ち明けた時、君は驚いていたけど、決して馬鹿だとは言わなかったね。


「そっか。じゃあ、夢のために一つを捨てたんだね。それって素敵」


大学を辞めたこと、攻める奴や呆れる奴は何人もいたけど、こんな風に言う人は誰もいなかったよ。

僕はその日初めて君の前で泣いた。

君は僕の涙について何も聞かなかったし、僕も何も言わなかった。でもきっといろんなことが君にはわかっていて、僕はそんな君に甘えていた。


夢なんて大それたことを、この歳になって話す僕のことを、君は一切笑わなかったな。ただひとつ、泣きながら話す僕の頭を撫でながら、「女遊びは程々にね」ってジョークを飛ばした。

君に出会ってから、君以外の女の子とは連絡すらとらなくなったことを知っている筈だから、あれはジョークだったんだろう。もしくは僕の過去に対する嫌味だったんだろうか。

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