幾久しく、君を想って。
そう言うと高本さんは声のトーンを上げて、「いーや、ここは是非とも上がろうよ!」と乗せてくる。


「松永さんに迷惑です」


あんなイケメンなのに、私みたいな者と誰かを比較させるのは悪いと笑った。

誰かというのは勿論、久保さんだ。
名前を出さなかったのは、彼女がこっちに来ようとしているのが見えたからだ。


きゅっと唇の端を持ち上げたままの彼女は、中へ入るとすぐに事務所へと向かいだした。

荷物はどうするの?と調理員さんの一人に聞かれ、「そのまま箱に入れておいて下さい!」と声を上ずらせて逃げて行った。



「何よ、あれ」


可愛くないわ、と高本さんが零す。
私は久保さんのことが気になり、彼女の去って行った方ばかりを見ていた。




「宮野さんはどうする?」


仕分けている事務所の社員さんに聞かれ、ハッと我に返った。



「厨房の冷蔵庫に入れておきます」


そう言いながら輪に加わり、松永さんと久保さんが何を話し合っていたのかを、わざと考えないようにした。


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