幾久しく、君を想って。
「いえ…」


別れた後の奥さんの気持ちを考えるとコメントもできずに沈黙した。
自分の離婚話をする気分でもなくなり、目線を下に向けていた。


「宮野さんに興味を持ったのは、仕事をしている姿が妻とタブって見えたからです」


驚きの言葉に視線を上げた。
目を見開く私に笑みを浮かべ、申し訳なさそうに「不純な動機ですみません」と謝ってきた。


「仕事中に髪を後ろで束ねているでしょう。そのスタイルが同じで、少しビックリしたのもあって。
でも、宮野さんは妻とは全然違って正反対の性格だなと思いました。初めて会った時から指輪もしていないし、最初は独身なのかなと考えてました」


だから、高本さんにいろいろとしつこく聞いたと言われた。
彼女からその話を聞かされていた私は、どう答えていいか迷った。


「注文している商品を何となくチェックしたら子供の好きそうな物が多いし、指輪はしてなくても既婚者なんだと思いました。
でも、『アラフォー部会』に初めて来た時、シングルマザーだと言われて意外で。
家庭の主婦が向いてそうな人なのに、世の中は上手くいかないもんだなと……」


「主人は私とは違って、家庭に収まりたくない人だったんです」


そう遮ると目線を向けられた。
彼の目を見ながら、忘れたくても忘れずにきた日々を思い出した。


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