幾久しく、君を想って。
『ワカレテクダサイ』
差し出した届けに署名と印鑑が欲しくて、拓海の将来も蔑ろにする様な言葉を言った。
金銭を要求されることもないと分かった夫は喜んで、意気揚々と名前を書いて印を押した。
それを手にした瞬間、これまでの苦労がわぁーと全部押し寄せてきた様な感覚があった。
一気に脱力して、その場にしゃがみ込んでしまった。
放心状態になった私を振り返りもせずに、夫は愛人と住む部屋へと戻った。
あの後、自分がどうやって拓海の面倒を見たのか、今もぼんやりとしか思い出せない。
多分きっと習慣化されていたんだろうと思う。
意識しなくても拓海の泣き声に反応して、抱き上げて背中をさすってやったような気がする。
よしよし。いい子だね……と言いながら。
「今思うと、その頃の私は病んでいたのかもしれません。
それでも拓海との生活を守らなければいけないと思って、親にも恥ずかしいけど訳を話して協力を願いました。
母は私を抱きしめて、『よく我慢したね』と慰めてくれた。でも父は、私のことを一切褒めもせずに、冷たい表情を浮かべていました。
きっと今も心の何処かで怒っていると思います。つまらない男に騙され続けた、馬鹿な娘だと思っている筈です」
父にも母にも申し訳ないと思いながら生活をしてきた。
いつか親孝行ができる日が来ればいいと願い、あのアパートの一室に移り住んだ。
差し出した届けに署名と印鑑が欲しくて、拓海の将来も蔑ろにする様な言葉を言った。
金銭を要求されることもないと分かった夫は喜んで、意気揚々と名前を書いて印を押した。
それを手にした瞬間、これまでの苦労がわぁーと全部押し寄せてきた様な感覚があった。
一気に脱力して、その場にしゃがみ込んでしまった。
放心状態になった私を振り返りもせずに、夫は愛人と住む部屋へと戻った。
あの後、自分がどうやって拓海の面倒を見たのか、今もぼんやりとしか思い出せない。
多分きっと習慣化されていたんだろうと思う。
意識しなくても拓海の泣き声に反応して、抱き上げて背中をさすってやったような気がする。
よしよし。いい子だね……と言いながら。
「今思うと、その頃の私は病んでいたのかもしれません。
それでも拓海との生活を守らなければいけないと思って、親にも恥ずかしいけど訳を話して協力を願いました。
母は私を抱きしめて、『よく我慢したね』と慰めてくれた。でも父は、私のことを一切褒めもせずに、冷たい表情を浮かべていました。
きっと今も心の何処かで怒っていると思います。つまらない男に騙され続けた、馬鹿な娘だと思っている筈です」
父にも母にも申し訳ないと思いながら生活をしてきた。
いつか親孝行ができる日が来ればいいと願い、あのアパートの一室に移り住んだ。