幾久しく、君を想って。
何事も勇気が無ければ話せなかった。

彼の離婚話は、私にその勇気をくれたんだと思う。


想像以上に長い時間、涙は枯れずに流れ続けた。

拓海のことも忘れ、松永さんの胸を借りてしまった。





「………すみませんでした…」


私が余りに泣き続けていたからだろう。
最初に話していた場所とは違い、自動販売機の裏側に回っていた。


鼻水と涙を拭きながら、一体今は何時なんだろうか…と思いだした。



「あの…今は何時ですか…?」


グスグスと言いながら松永さんを見ると、彼はポケットからスマホを取り出し、「十一時前ですね」と教えてくれる。


「十一時前!」


離婚して以来、そんな時間まで外にいたことはない。


「いけない。私、帰らないと…」


急に思い出したように動こうとしたら、松永さんの腕は私を離さず、ぎゅっと力を入れて抱きしめ直した。



「待って下さい」


頭の上から聞こえる声が近過ぎて胸が鳴り始める。
あの映画の日に触らないようにします…と言っていた人の腕の中にいる。



ドキン…ドキン…と鼓動が大きくなってくる。
怖さよりもこの先にあるかもしれない期待が胸の音を大きくさせていく。



「宮野さん、俺が最初に言った言葉を覚えていますか?」


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