幾久しく、君を想って。
腕の力を若干緩めて聞かれる。
えっ?と顔を上げたら、松永さんの真剣な眼差しとぶつかった。


「俺はもう二度と、人生の中で誰かを好きになったり、結婚したいとは思いたくなかったんです。自分も傷つきたくなかったし、相手のことも傷付けたくなかった。…でも、宮野さんだけは別です。俺の心に入り込んできて、そんなことは綺麗事だと囁く。
起きてても寝ててもその声が大きくなってきて、俺の胸を締め付けて離さない」


「私が?何を?」


言い掛かりは止めて欲しいと願おうとしたらーーー


「貴方は何も言ってません。俺がただ、貴女を好きなだけです」


そう言って顔を寄せてきた。唇が重なり、この間のような一瞬ではなく、きちんとキスだと分かるくらいの長さで触れた。


離れていった人の顔をまじまじと見てしまった。

ドクドク響く鼓動を感じながら、ゆっくりと再度近寄る人を拒まずに目を伏せた。


松永さんのキスは優しく触れ合ってから深くなった。
そうっと入り込んできた舌の感触を受け止めながら、離婚して以来初めての感覚を味わった。


彼の舌の動きに合わせて自分の舌が動いてしまう。
妻でもなく母でもなく一人の女性として求められているようで、嬉しくて堪らない気持ちが拡がっていく。


頭の隅でその心地好さを思い出した瞬間………




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