幾久しく、君を想って。
私が余りにも顔を覗き込んでいた所為だろうか、少しだけ唇が動いた。

ドクッと心臓から血液が送り出される様な気がして、じっとその口元を見据えた。



「俺と居ても……別れた男が重なると言うんですね」


冷たい声に胸の奥が震えた。
そう捉えられても仕方の無いことを話した。


目を伏せて、怖くなりながらも頷いた。
松永さんを見れず、俯いたままでいた。


「宮野さんはこれからもずっと、その別れた相手だけを想って生きていくつもりですか?俺だけじゃなく、他の誰が言い寄ったとしても!」


語尾が強くなってビクつく。
車内に響く声に、ビクビクしながら頭を横に振った。


そんなつもりは無い。
過去を振り返らずに生きるんだと、ずっとそう思いながら生きてきた。


「でも、俺と居ても別れた相手が浮かぶんでしょう?俺がその人にでも似てますか!?」


問い質すように聞かれ、聞いた本人も悔しそうに息を呑んだ。


「いいえ!」


それだけは顔を見て言いたくなった。

松永さんはあの人とは違う。
年や顔だけじゃなく、雰囲気も喋り方さえも似ていない。


「違います!全然似ていません!」


あの人は人生の中で出会った最悪な人。
甘い思い出も苦い思い出も全部、私の中に残していった。


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