幾久しく、君を想って。
「宮野さん…」


落ち着きを取り戻した様な声がして振り向いた。

その顔を眺め、大きく胸が弾んだ。


ほやっと照れ臭そうに笑う顔を見つめ、この顔が一番好きだ…と思った。

安心していられそうで、寄り添いたくて、包まれたくなる……。


思いとは裏腹に、きゅっと唇を噛みしめて堪えた。

なのに、涙は正直に零れそうになっていく……。



「また泣きそうだ……どうして?」


寄ってくる彼の肩を借りた。
もう一度だけ幸せな夢を見たいと願いながら、小さな声で囁いた。



「松永さんのことが……好きだと思うから……」


拓海にごめんね…と、心の隅で謝った。

今ここにいる自分は、親でも何でもない、一人の女性だ。


ぎゅっと彼の袖を握りしめ、幸せの瞬間を感じ取った。



「また煽ってる?」


笑うように囁く声に胸を熱くさせながら首を横に振った。

唇を寄せてくる気配に目を閉じ、深いキスを受け取った。



「真梨…さん……」


唇を離した声に目を開き、微笑む顔を焼き付ける。



「松永さん」


ほやっと目尻の下がった顔が「和樹」だと訂正した。



「かずき……さん…」



好きな人の名前を初めて呼ぶのは恥ずかしい。
相手が誰でも、それは同じことだ。


目を見合わせた彼と軽いキスを交わした。

それから気持ちを鎮めるように、お互い黙ってミントティーを飲み込んだ。



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