幾久しく、君を想って。
情けなさと切なさとが込み上げてきて、涙腺が緩んできそうになった。
それを堪えて、何とか彼にお礼を言った。




「……ありがとう。和樹さん」


彼の顔を見たら、「俺の方こそ」と返されてくる。

(何が?)と思いながら首を傾けるとーーー



「二人で遊んでいたら、親子と勘違いされたんだ」


『似ていますね』とか『イケメン同士でカッコいい親子ですね』と褒められたらしい。


「俺にはそんな経験なかったし、拓海君も嬉しそうに笑ってくれてさ。
甥っ子とも同じように遊んできたけど、あっちは親が別にいるから甘えてもこないだろ。
だから、今日は父親として振る舞えて最高に幸せだったし、めちゃくちゃ気分が良かった。
子供がいるのはいいな…と、改めて思ったよ」


ベッドで寝かそうと言う彼に従い、拓海の部屋のドアを開けた。

まさかそんなことを言われるとは思ってもみなくて、より一層切ない気持ちが胸に広がっていく。


涙が零れ落ちそうになり、急いで気を引き締め直した。


ベッドへ連れて行って貰った後、ゆっくりと背中を付ける姿に感動して見入ったーー。


乳児の頃、拓海を寝かし付けることも出来なかった夫を思い出した。

泣き止ませることもしないで、自分から子供の側を逃げて行った。


せめてもう少し努力と我慢をしてくれて、自分の血を分けた分身を可愛がろうとしてくれたら良かったのに。


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