ビルの恋
そこは、空港から車で10分とは思えないほど、自然に囲まれた場所だった。

林の中の広い一本道を抜けたところに、大きな洋館があった。
本条君に聞くと、ホテルとして使われている建物だという。
確かに、洋館というには大きすぎる。

車を降りると、やっぱり寒い。

「寒いー」

「東京の人には厳しいですよね。
ホテルの中に入ります?
それとも、少し周りを見ますか?」

「見る」

本条君は、私に見せたいものがあるから連れてきたのだ。
その気持ちに応えなくては。

本条君はホテル脇の道に入っていく。
足跡が、うっすら積もった雪の上に残っていく。

脇道を抜けると、大きな川があった。
そして川岸に、小屋のような建物がいくつか点在しているのが見える。
周りは森だ。

「あれは?」

「コテージです。
ホテルとは別に、あそこにも泊まれるようになってるんです」

「ゴルフコースは?」

「あの石造りの建物、見えます?」

そう言って本条君はホテルと逆の方を指した。

「あれがクラブハウスで、その奥にコースが広がっています」

本条君は来た道を戻り始めた。

「昔はゴルフ場メインだったのを、コテージを作って、家族やカップル向けに営業を多角化したんです」

こういう話をすると、本条君はいかにもコンサルという感じだ。

「へえ。もしかして、ここの開発にはうちの会社が関わった?」

「いえ」

「随分詳しいけど」

「僕の実家が経営してるんです」









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