待ち人来たらずは恋のきざし
ご飯を済ませていつものように一緒に後片付けをした。
一見何も変わりない。
いつも通り。
だけど違う。
「景衣、先に入ってるから」
「はい。…あ、待って」
後から入るのは入り辛い…。
「待ってください、私も一緒のタイミングで行きます」
「そうか?…じゃあ」
よっと。
「え?あ、ちょっと…」
そんな気分じゃ無いのに。
「抱っこされて運ばれる気分じゃ無い?」
「え?」
「いつも通り、普通に入って、普通の流れで話せばいいだろ」
「…はい」
浴室に運ばれて降ろされると男は先に服を脱いだ。
相変わらず早い。
「手伝う?」
…いい。と思ったけど…。
「手伝って?」
男が意外だって顔をした。
「ぁ、…フ。…全く。
そうくるとは思わなかったよ。
景衣は…モテると思うよ」
…な、に?…その言い方。今日に限って?
簡単に着替えていたアンサンブルのセーターもスカートも、もう脱がされていた。
抱きしめられてブラを外された。
「や、…早い」
「ゆっくりしてると余計恥ずかしいだろ?
下は?自分で脱ぐ?」
「…このままで居てよね?」
「…フ。…解ってるよ」
ショーツに手を掛けずらし、片足ずつ脱いでいった。
結局、自分で脱いだ物はこれだけなんて…。
ぐらつく私を支えながら男の唇がふれた。
「…景衣。俺は景衣が好きだからな…」
あ、…。
…もう話さなくてもいいんじゃないかと思った。
わざわざ昔あった事を話して、そして今日の事を言って…ざわつかせるなんて。
そんな話だともう解っているから、今の男の言葉は先回りした言葉だ。
そして先に言われた言葉はヤキモチだったかも知れない。
抱きしめられた。
「…入ろう。流石に寒くなってきた。
景衣も、ほら…鳥肌」
腕に出ているのが解った。
「…はい」
でも…これは、寒くてじゃないの、貴方が触れたからよ。
指先が触れたから反応したのよ。