待ち人来たらずは恋のきざし


「今日は?…聞かなくても大方の事は察しがつきますが。

浅黄にちょっかいは出すなという事を言いに来たのでしょ?
それなら、大きなお世話だと言わせて貰おうかな。
何故なら、浅黄の心は浅黄のモノ。誰を思おうと自由だからだ。

君達はもう籍を入れたのかな?まだだよね。
ただのつき合いだ。だったら、私が好きになる事くらい構わない事だ。

人のモノを盗るというのがモラルに外れているというのは解りますよ?

人は好きにもなるが、嫌いにもなる。
まだ君達だってどうなるか解らない。
まだ何も具体的では無いのだろ?」

「一緒に居る以上、私が言える事は、景衣を信じていると言う事だけです。
今日は、特に貴方と話がしたかったと言う訳でもありません。
貴方がどんな人か、会って見たかっただけです。
その為の時間が欲しかっただけです。

この事は景衣は知りません。
これからも仕事は続けるようですので…。

お時間を頂き有難うございました、失礼します」


…はぁ、俺の方が先に立ってペラペラ喋り続けたなんて。

確かめに来るとは…。不安からか、やはり余程好きとみえる。

景衣を信じている、か。真っ直ぐな事を言う…。

…危うい願いだな。

浅黄は揺れるぞ?
何故なら、浅黄は変わっているからだ。
難しく考えなくていいのに、妙な方向からモノを見る事があるからだ。
結果、考え過ぎてしまう。

干渉しない、自由でいいからと放っておいたら、とんでもない事になりかねないぞ?

今まで一人だったのは誰にも縛られたくなかったからだととるか、縛ってくれなかったから結果一人だったのかととるかで全然違って来るんだ。

浅黄の隠された本質でつき合わないと、あっさりと終わってしまうぞ。

干渉されたく無いは、干渉されたいの裏返しだ。

本当の浅黄は淋しがり屋で、だから甘えたがりで、好きな相手とは一緒に居たい奴なんだ。

少なくとも俺はそう思っている。

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