見えない僕と彼女の気持ち
「……はい」

『森内様のご携帯でしょうか?』

「はい」

『私……』
 
電話の向こうの男は昨日のレストランの店員だと名乗った。
さらに、忘れ物をしているので取りに来て欲しい、と。

忘れ物とはきっと、花束に指環に彼女が置いたお金のことだと思う。
そんなもの見たくなくて、処分を頼んだらダメだと云われた。
取りに来ることが難しいならお届けに上がります、と。

嫌々住所を告げ携帯を切ると、二本目のビールを開けて一気に飲み干した。

 
その後、ぼーっとテレビを眺めてた。
ワイドショーはどこも、透明人間の話題で持ち切り。

……そんなに人の不幸が面白いかよ。

別に彼らは意図して僕のことをさらし者にしているわけではないのに、被害者意識を持ってしまう。

 
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