見えない僕と彼女の気持ち
ピンポーン、何本目かのビールを開けた頃、チャイムが鳴った。

出ようとしてこのままではダメなことに気が付いた。
慌てて上着を羽織り、マフラーを巻いてサングラスをかけ、帽子をかぶり手袋をする。
ドアを開けるとそんな僕の姿に面食らっている、レストランの店員。

「……お忘れ物を、お届けに……」

「ああ、わざわざありがとう」

小さな手提げ袋と花束を受け取る。
店員が帰ると、僕は変装を解いた。
目の前の床の上には、立派な薔薇の花束。

……ああなんだよ。
もしかして夢だったんじゃないかと思おうとしたのに。
わざわざ突きつけられるなんて。

僕は薔薇の花束を掴むと、床にたたきつけた。

そのまま、何度も、何度も。
まるで狂ったかのように。

真っ赤な薔薇の花びらがたたきつける度に舞い上がる。

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