1405号室の佐藤
自分で言いながら、言い得て妙だな、と思った。


薄々勘づいてはいたんだけど。

ユウジの優しさは、表面的なもの。

柔らかい物腰と、穏やかな笑顔で、当たり障りなく他人と接しているだけ。

そうすれば、誰からも好かれるから。


ユウジは、人から嫌われるのがいやなんだ。

だから、別れたい彼女に対してまで、「嫌いになったわけじゃない」とか、機嫌を取るようなことを言うんだ。


すっぱり切ってくれたほうが、振られる側としては楽だよ。

それが本当の優しさじゃない?

自分が嫌われたっていいから、相手の未練を断ち切ってくれるほうが。


つまりユウジは、誰にでもいい顔したい八方美人なんだ。

それが、やっと今、わかった。


《………楓、なに言ってんの? そんな口きくとか、お前、どうかしちゃったんじゃないの?》

「べつに、どうもしないよ。あたしはこういう人間なの。ユウジに嫌われたくなくて、猫かぶってただけ。
でも、もういーや。なんかもう、どーでもいい。じゃーね、ユウジ。もう二度と会わないだろうけど」


一方的に言い切って、あたしは通話を切った。

そして、ぽいっとスマホを放り投げる。

分かってたけど、ユウジが電話をかけ直してくることはなかった。


すっきりした、とでも思ってんのかな?

てゆーか、もう、新しい彼女といちゃいちゃしてんのかもね。

ま、どうでもいいけど。


ふふっ、と笑いがこみ上げてきた。


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