1405号室の佐藤
「…………お前、すげーな。なんだよその豹変ぶりは?」


佐藤が目を丸くしてあたしを見ている。

鳩が豆鉄砲くらったような顔。


「んー、なんかねー、目から鱗ってゆーか、憑き物がとれたってゆーか、一肌脱げたってゆーか、そんな気分?」

「………ほう、そりゃめでたい」


佐藤はうんうんと頷いて、「まぁ呑め」とあたしのグラスに日本酒をついだ。


「ありがと」


あたしはそれを一気に喉に流し込んだ。

佐藤はくすくす笑いながら、自分も酒をあおった。


「………ま、ご縁がなかったってことだ。つーか、二股かけるようなしょうもねえ男だってことに、早く気づいて良かったじゃん。騙されたままオバサンになってたら、お前の人生無駄にするとこだったな」


励ますように言った佐藤の言葉。


それを聞いた瞬間、なぜか、


ーーーあたしの涙腺は崩壊した。


「うわぁあぁぁ〜〜〜〜ん!」

「えぇっ!?」


突然泣き出したあたしに、佐藤が唖然と口を開いている。

あたしは酒をぐびぐび飲みながら、どばどば涙を流した。


「ちょっ、お前、なんで泣くんだよ!?」

「だって! やっぱムカつくんだもん、悔しいんだもん!! 浮気とか、二股とか、最悪………気づかなかった自分がアホすぎて悔しい………うわぁ〜〜〜」


子供のようにわんわん泣きじゃくるあたしを、佐藤は困ったように、呆れたように眺めていたけど。


「…………ほんっと、バカなやつ」


ーーーふわ、と包まれる感覚。


………え?

思考が停止する。


なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。

あたし………抱きしめられてる?

初対面の男に?

なにこの甘きゅんLOVE的展開は!?


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