1405号室の佐藤
あたしのキャパを軽く超えた事態に、完全に頭まっしろ状態になっていると。


ーーーぽん、ぽん。

今度は、頭を優しく撫でられて。


「………さっ、佐藤サン!?」


がばっと顔を上げると、意外イケメンがふんわりとした微笑みであたしを包んでいた。

やばい、心臓が破裂しそう………。


「………お前、めっちゃどきどきしてんじゃねえか。せっかく飛び降り自殺しなくてすんだんだから、心臓発作で死亡なんてアホなことすんなよ?」


佐藤がからかうような口調で、にやにや笑いながら言った。


さっきまではアホやらバカやら言われて、めちゃくちゃムカついてたけど。

今は、佐藤の「アホ」に優しさを感じてしまう始末。


ーーー人生って、アンビリーバボー。


でも、ひさしぶりに包まれたひとの体温は、とってもあたたかい。


あたしは佐藤の背中に手を回して、ほぅ、と息を吐いて、小さく言った。


「………えーと。わたくし、1505室の大谷楓と申します。えー、今後とも、よろしくお願いします」


ぼそぼそと言うと、佐藤はぶはっと吹き出して、「今さらかよ!」と笑う。

そして、あたしを抱きしめる腕にぎゅっと力を込めた。


ーーーー生きてればいいことある、って、あれ。

案外、本当かも………。


佐藤の肩に頬を当てながら、あたしはそんな現金なことを考えていた。



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