夜界の王
「…!?」
いきなり視界を奪われ、アーシャはびっくりして固まった。
「すぐ終わる。目を閉じていろ」
わけのわからぬまま、言われたとおり瞼を閉ざす。すると、両目の周囲からこめかみにかけて、じんわりとした熱が広がっていくのを感じた。
(なに…?)
何かと問うより早く、感じた熱はすぐに消える。ダレンの手も引いていき、視界が開放された。
「もういい。好きに読め」
アーシャは目の周りに触れてみるが、何も異変はない。
(なんだったんだろう…)
今のことを聞きたかったが、彼はすぐにそばを離れてしまったので聞くタイミングを逃してしまった。
釈然としない気持ちだったが、問い詰めてまで聞く勇気もなく、何も言わないことにした。
アーシャは適当に本棚から本を抜き出し、軽くページをめくった。
植物の図鑑らしく、みたことのない形の植物の絵がたくさん載せられていた。
中には絵だとわかっていても鳥肌がたつ奇怪な形をしたものがあり、思わず本を遠ざけはっきり見えないよう目を細める。
だが、よくよくみるとそういった奇妙な植物は、薬草として使われる用途があるらしいことが説明文に書かれていた。
村には生えていなかった植物で、調合の仕方も知らない方法がさまざま提示されている。
軽い気持ちで手に取ったつもりが、いつのまにか勉強する感覚でアーシャは熱心にページをめくっていた。
「気に入ったものがあったか?」
「あ…はい!」
夢中になっていたため、その場に立ちっぱなしだった。ダレンは暖炉の用意をしてくれたようで、アーシャはその本を持って慌ててそばへ行った。