夜界の王
アーシャの持ってきた本を覗くと、ダレンは植物の図の羅列にひとつ瞬きする。
「薬草が好きなのか?」
「はい。面白い植物がたくさん載っていて、勉強になります」
「ほう…」
ダレンの声には珍しそうな響きがあり、アーシャは目を瞬かせる。
(薬草が好きって、変なことかしら…)
アーシャの開いているページには、薬草とはいえ見た目がおどろおどろしい植物ばかりが並んでいる。
なにもこんなおぞましい見た目の植物だけが薬草ではないはずだが、ページをめくってもどれも見た目がひどいものばかり。
ダレンの表情は動かないままだが、漏らした声が言外に「妙な趣味だな」といっているように感じなくもない。
「あ、えっと、わ、私、薬をつくっていたから、それで興味があって! なにもこんな見た目の植物が好きってことじゃなくて……見るのならもちろん、可愛くて綺麗な草花の方が好きよ。本当に」
慌てて弁解するようなことでもないが、こういう嗜好だと認識されるのは不本意だ。
可愛らしい花を例に出したくてページを探すが、なぜかどんなに探しても見当たらない。
もしかして、この本はこういう奇天烈な見た目の植物を特集した図鑑だったんだろうか?
そろりとダレンの顔を見上げる。
静かに見下ろされる視線を受け取り、アーシャはこの上なく気まずくなった。