夜界の王
(なんだか、思いがけず誤解されてるみたいで恥ずかしい…)
いたたまれなさに縮こまっていると、頭上からクスッと笑いを含む声が漏れたのを聞いた。
「そんなに捲し立てなくとも、俺は何も言っていないぞ」
顔を上げたアーシャに、ダレンは愉快そうに見下ろしながらそう言った。
嘲笑するものではなく、純粋に可笑しくなり笑って出た声だった。
初めて変化の見えた彼の声音に驚いたが、アーシャはすぐに言い返す言葉を考えた。
「でっ、でも、言葉にしていなくても眉が寄っていたわ! 心の声が顔に出てたもの」
「思い込みだ」
「そんなこと…っ」
納得できずむくれるアーシャに反して、ダレンはなおさら愉快そうだった。
常に力を入れたように引き結んでいた口元が、今は弧を描いて笑っているように見える。
一見見ると無表情と変わりない表情に見えるが、注意深く見ると、やはり彼は間違いなく笑っているようだった。
これが、この人の笑顔なんだろうか?
とても控えめで、分かろうとしなければ分かりにくくて、でもその笑みには嫌味な棘がない。
晴れやかな太陽のような笑顔ではないが、ひっそりと佇む夜の月のような静かな笑みが、なんだか彼らしい。
ようやく真顔以外の彼の表情を見られて、アーシャは心の中でほっとした。
ダレンは暖炉のそばにアーシャを残し、本棚のそばへと行った。迷うそぶりもなく本を一冊抜き取ると速やかに戻ってくる。
「お前が言うのはこういった植物か?」
開かれたページを覗いてみると、アーシャはあっと声を漏らした。