秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~

仮面舞踏会では顔が見えない。よってその夜の人気を決めるのはその衣装の豪華さだ。

エリーゼのドレスは当然ながら、公爵家の財産にものを言わせたやれ金糸やら宝石やらを埋め込んだ豪華絢爛なものばかりだ。

対してコルネリアの家は新参の伯爵家であるため、領地も狭く、注目すべきは港を有することくらいのものだ。
コルネリアのドレスは決して粗末なわけではないが、王侯貴族も集まる会で見れば、やはり見劣りはする。
加えて、生来のおとなしい性格も加わり、夜会ではいつも壁の花となっている。


「いい? コルネリアは誰に名前を聞かれても答えないで、ただ笑ってあしらってくれればいいの。正体を明かさないのは仮面舞踏会のルールだもの、別に失礼にはならないでしょう? その間に私は彼と落ち合って、教会へと向かうわ。結婚の誓いさえしてしまえばこっちのものよ」

「誓ったところで離婚させられたらおしまいではないの」

「それでも、あのベルンシュタイン家に、傷物の娘はやれないでしょう? お父様は特にプライドが高いもの。そうなれば私の意思を尊重したという美談で仕上げるより他なくなるはずよ」

「そうかしら」


コルネリアはいまいち不安だった。

確かにバルテル公爵はプライドが高いし、娘に出し抜かれたなどとは世間の人には言えないだろう。
だけど駆け落ちしたところで、一介の騎士にエリーゼのような生粋のお嬢様の満足する暮らしなど提供できるだろうか。

< 16 / 147 >

この作品をシェア

pagetop