その唇で甘いキスをして…

カオルはあの時みたいにキスしようとする。

もう一度あんなキスをされたらアタシはおかしくなる。

「…このままじゃ終われないだろ?」

カオルはそう言うけど

「それでも終わらせなきゃ。

アタシはハルさんに…捨てられたくない。」

アタシはそう言うしかない。

カオルはものすごく怖い顔になった。

「じゃあ、終わらせる前に俺と寝てよ。

一度でいい。」

それが出来なくても…カオルはそれに拘った。

「今はダメ。体調も悪いし…」

「どこか悪いの?」

カオルはアタシの首に触れる。

自分のオデコをアタシのオデコに合わせる。

「熱、あるな?」

「うん。」

カオルは熱を測る振りをしてそのままアタシにキスをした。

逃げようとしたけど…力が出なかった。

ここに来たアタシが悪い。

フシダラなアタシは本当はこんな事を望んでたのかもしれない。

それでも辛くて立ってられなくて体の力が抜けてく。

「ジュン⁈大丈夫?」

アタシは気を失って
目を覚ますとジョウさんが迎えに来ていた。

カオルの左の頰の色が変わって口端が切れていた。

きっとジョウさんに殴られたんだ。

「ジョウさん…カオルは悪くないの。

だから怒らないで…。」

「わかった。

ジュン、立てるか?

ホテルに戻ろう。

ここに居たらハルキさんが悲しむ。」

アタシは頷いて立とうとしたけど…チカラが入らない。

ジョウさんに抱きかかえられてジョウさんのクルマに乗せられた。

なぜだか涙が止まらなくて
泣きじゃくるアタシをジョウさんが優しく包んだ。

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