その唇で甘いキスをして…
次の日はいつもより早くお見舞いに行った。

アタシはハルさんにプレゼントされたドレスを着て
夕方から恵比寿で食事の約束がある。

「今日は一段と綺麗だな。」

カオルはそう言って寂しそうな顔をする。

「うん、予定があって…夕食までは居られない。」

「結婚記念日だろ?」

「覚えてたの?」

「うん。ジュンの事はジュンより知ってるよ。」

「そうか…そうかもね。」

昨日ハルさんが渡した包みが開いていた。

「観たの?」

「もちろん。」

「へぇ。どんな感じのヤツ?」

「ん?観たい?」

「まさか!」

本当はちょっと興味なあった。

ハルさんが選んだ作品はどんなのなのかな?

「観てみろよ。」

パッケージを見てみるとそれは結構新しめのハリウッド映画だった。

「なんだ。エッチなヤツかと思った。」

「お前何勘違いしてんだよ。」

ハルさんとカオルにからかわれた。

「期待しちゃった?」

「バーカ!」

カオルは突然アタシの腕を掴んだ。

「帰したくないな。」

そう言ってアタシを引き寄せる。

「ハルさんが待ってる。」

アタシが手を解こうとすると

「キスしたら帰っていいよ。」

と困らせた。

カオルは本気だった。

「ジュン…もう一回だけ。」

そうやってまたアタシを困らせて
どうしていいかわからなくなる。

ぜったいダメな事だけど

アタシはカオルを突き放せない。






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