その唇で甘いキスをして…
狼男のプラトニック

アタシはそれをハルさんに話せなかった。

カオルに打ち明けると

「可能性はゼロじゃないんだろ?」

と言った。

確かにゼロではないけど…
ショックだった。

こんな涙はカオルの前でしか見せられない。

「オレだって一生無理かも。」

「カオルだってゼロじゃないよ。」

「出来るか試してみるか?」

「リンちゃんがいるでしょ?」

そう言った後にリンちゃんのことを思った。

リンちゃんはゼロだった。

それがどんなに辛かったか考えると胸が痛くなる。

「カオル…もし出来るようになったらリンちゃんを捨てるの?」

「は?」

「リンちゃんを絶対傷つけないで。」

「リンは…そういうんじゃない。

友達だよ。俺たち…ジュンとはちょっと違うけど…
大切な友達だ。」

「キスはした?」

カオルは黙ってた。

答えは顔に書いてある。

ノーだ…

「好きなんだよね?」

そう聞くとカオルは寂しそうに言った。

「…リンは旦那さんをまだ愛してる。」

「それならどうして家を出たの?」

答えはわかってたけど納得出来なかった。

子供が居なくても…いくらだって幸せになれるハズだ。

リンちゃんがとった行動はアタシには理解できなかった。

それに従った旦那さんの事も許せなかった。

そしてそんなリンちゃんの恋人だと思ってたカオルが片思いだったと知ってなんだか複雑な気持ちになった。
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