その唇で甘いキスをして…


「病院行ったのか?
行くなって言ったろ?」

「ごめん。」

ハルさんはアタシを抱く手を止めて
ベッドから離れた。

「ハルさん、怒ってる?」

「ジュン…俺はジョウがいればそれでいいんだ。

無理する必要はない。」

アタシは部屋から出て行くハルさんを追いかけた。

「ハルさん、抱いてくれないの?」

「萎えた。」

本気で怒ってるみたいだった。

「ごめん…でもハルさんの子供が欲しいって言っちゃダメ?」

「ジュン…先生から聞いたろ?

お前はジョウを生んだ事も奇跡なんだそうだ。」

ハルさんはアタシが流産で倒れた時
先生からアタシの身体について聞いていた。

「不妊治療は大変なんだ。

俺はお前に傷ついて欲しくない。」

ハルさんとアタシはバツイチ同士だ。

ハルさんにはナナコさんと言う奥さんが居た。

ナナコさんの仕事の都合で2人は離れ離れの生活をしてナナコさんはイタリアで好きな人が出来て
ハルさんと別れた。

「ナナコは1日も早く子どもが欲しくて
早いうちに病院に行って俺に色んなことを強要した。

俺は忙しかったし…ナナコの思うように行かなくて
ナナコは俺といるのがストレスになって
イタリアの仕事を引き受けた。

後はもうお前が知ってる通りだ。

アタシは2人の離婚の原因をその時初めて知った。
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