その唇で甘いキスをして…

家を出たけど行くとこがなかった。

アタシが最後に頼る場所はママの所だった。

ママはだいぶ年を取っただろう。

アタシはジョウを身籠った時、
一度だけママを頼った。

アタシは結婚式でママに会ってから
一度もママを訪ねなかった。

昔のようにママを憎んではなかったけど
未だにどう接していいかわからない。

突然アタシが訪れると

「あの男に捨てられたの?」

と驚きもしないで言った。

「浮気でもしたんでしょ?」

「違うよ。ハルキさんはそんな人じゃない。」

ママは笑って言った。

「アンタでしょ?浮気したの。

あの男はそんなことしやしない。

血は争えないみたいね。」

そうだった。

アタシにはママの血が流れてる。

子供の頃から何人も男を家に連れ込んで
娘のいる隣の部屋で男と平気で寝るような女だ。

そしてその男が娘に手を出しても
母親じゃなく最後まで女だった人だ。

「しばらく置いて。」

「好きにすれば?

でも、男も一緒だよ。」

前にここに来た時暮らしていた男とは違う男だった。

ママよりもかなり若くて、アタシとたいして年も変らない気がした。


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