その唇で甘いキスをして…
ジョウさんの面会を終えて帰って来たカオルは

「元気そうだった。」

としか言わなかった。

「それだけ?
なんか話しなかったの?」

「…俺にはもう来るなって…

それとジュンにはジョウの父親ってこと忘れて欲しいって言ってた。

俺もその方が良いと思う。

ジョウには2度と会わないそうだ。

だからジュンもジョウさんが父親だってことは一生ジョウには口にするなって…。」

アタシはジョウさんがまたあの時のように
暗い闇のなかへ1人で入ってしまう気がして
居ても立っても居られなくなった。

「ジョウさんに会ってくる。」

「だから無理だって。

もう面会してくれないよ。」

「それでも通ってればいつか会ってくれるかも…

今はジョウさんを1人にしちゃいけないと思うの。」

カオルはアタシを引き止めたけど
アタシはその腕を振り払ってもジョウさんに会うべきだと思った。

だけど…その前まで行くと
初めて来たその場所に足がすくんでなかなか踏み出せないでいた。

ジョウさんに面会を断られるのが怖かった。

すると後ろから肩に手を置かれて
ビックリして振り向くとハルさんが立っていた。
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