その唇で甘いキスをして…
アタシを抑えきれないカオルはハルさんに助けを求めた。

「中、入らないのか?」

「ハルさん…どうして?」

「ジョウに逢いたいならカオルじゃなくて俺に言うべきだろ?」

アタシがハルさんに言わなかったのは間違いだった。

「せっかく来たんだ。逢いに行こう。」

ハルさんはここに来たことをどう思ってるんだろう。

カオルにしか話さなかったことを怒ってるんだろうか?

ハルさんが一緒だったこともあって、
ジョウさんは会ってくれた。

でもハルさんの前じゃ言いたいことも言えない。

だけどハルさんはそんなアタシの気持ちがわかってるのか

「話があるんだろう?

先に出てる。」

と部屋を出てった。

「お前、ハルキさんに悪いと思わないか?」

「わかってるけど…アタシはジョウに父親の事を必ず話すから。

大きくなったら自分の血液型を疑問に思う日が来るだろうし、
ずっと隠し通せる訳じゃないもの。」

「死んだとでも言えよ。

どっちにしろジョウがデカくなるまで
俺が生きてるかもわかんねぇけどな。」

ジョウさんは昔、店を辞めた頃に戻ってた。

まるで世捨て人のようで
アタシは哀しくなった。

「絶対話すから。

その時ジョウさんがまたこんなとこに居ても
必ず話すから。」

アタシはそれだけ言うと部屋を出た。

ハルさんの顔を見て謝った。

「ごめんね。」

泣いてるアタシの涙をハルさんは綺麗な指で
優しく拭ってくれた。

「仕方ない。ジョウにはジョウの血が流れてるんだ。」

ハルさんは寂しそうにそう言った。
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