その唇で甘いキスをして…
愛し合ってるのに
何故離れなきゃならないのかアタシは分からなかった。

でもハルさんは決して振り向かない。

「幸せになるための別居だと思ってくれ。」

とアタシを追い出した。

もちろんジョウには毎日逢えた。

ハルさんのいない時間はなるべくジョウと過ごした。

寝る以外はほとんど店に居て
夜はお酒を飲んで毎晩フラフラになって帰る。

カオルがたまに様子を見に来た。

カオルには別居してることを内緒にしてたけど…
すぐにバレてしまった。

夜更けまで飲んでそろそろ帰らなきゃならないと思うと

「あの部屋に帰りたくないな。」

と自然に呟いていた。

誰も居ないマンションに帰るのがすごく辛かったから。

「オレの所に泊まるか?」

カオルがそう言ってアタシを誘惑する。

誘惑じゃないんだろうけど…
今のアタシがカオルと二人きりになったら危ない気もした。

「ハルさんに捨てられたくないの。

だからカオルとは二人にならない。」

「じゃあ帰って寝ろよ。」

ハルさんは一週間経っても一ヶ月経っても逢いに来なかった。

このまま終わってしまう気がして怖かった。

アタシはハルさんに逢いたくてマンションには帰らず
その夜遅くハルさんとジョウのいる家に行った。

「したくなったら来ていいって言ったよね?」

ハルさんは酔ってフラフラのアタシを家には入れず
車でマンションまで送った。

「いや!あそこには帰りたくない。

ハルさんのそばに居たいの。」

「少し頭を冷やせ。

そんなお前をジョウが見たらどうする?」

アタシは泣いた。

「ハルさんのせいだよ。
ハルさんが一人にするから…アタシ…」

ハルさんは呆れた顔でちっともアタシを見てくれなかった。
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