その唇で甘いキスをして…
切ない想い
ハルさんがアタシにキスをして
アタシは動けなくなった。

だけどアタシはもう別れるつもりでここに来た。

「やめて…ずるいよ。ハルさん…」

「オレが欲しいって言え。」

アタシはハルさんの腕の中で必死に抵抗した。

いつも優しくて大人で素敵なハルさんはそこに居なかった。

抵抗すればするほど
ハルさんはアタシを離さなかった。

「ジュン…別れるつもりで別居したわけじゃない。」

「でも…ハルさんはアタシを拒んだでしょ?」

「あれは酔ってたからだ。

あんな姿のお前を抱くのは…卑怯だろ?」

「何が卑怯なの?

あれでもすごく勇気を出したの。

シラフじゃ会えなくてアルコールに頼るしかなくて…。」

「それでオレに拒まれたからカオルと寝たのか?」

返す言葉が無かった。

「誰でもいいのか?」

ハルさんに言われた言葉はいつまでもアタシの胸をえぐるように傷つけた。

「もう、付きまとわないから…。
離して。」

アタシはハルさんの腕を振りほどいた。

ハルさんはアタシの腕をもう一度掴むと寝室に連れて行こうとする。

「いや!離してよ!」

揉めてると

「パパ、ママをイジメないで!」

とジョウが叫んだ。

その場で泣きながら必死で止めるジョウを見て
アタシもハルさんも我に返った。


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